REPORTレポート
代表植村の自伝的記憶
最先端の課題解決に実務で取り組む社会人こそ取るべき博士号
みなさんは筑波大学が取り入れている博士後期課程の早期修了プログラムをご存じでしょうか。この早期修了プログラムとは、一定の研究実績や能力を持つ社会人を対象に、通常、3年ほどかかる博士後期課程を最短1年で修了し、課程博士号を取得できるというプログラムです。
「頑張る社会人を応援する」と謳っている通り、仕事などを通して積み重ねてきた研究実績をベースに、指導教員から論文作成の指導を受けて博士論文を完成させます。
筑波大の場合、法学や経営学などのビジネス科学研究群、数学や物理学、化学といった数理物質科学研究群、社会工学や構造エネルギー工学などのシステム情報工学研究群、生物学や農学、環境学といった生命地球科学研究群、食料革新や環境制御などのライフイノベーションの5つの研究群で早期修了プログラムを活用できます。
なぜこんな話をしているかというと、インデックスのグループ会社、インデックスストラテジーの取締役兼執行役員を務める池戸あいりが筑波大の博士後期課程プログラムに入学し、構造エネルギー工学での博士号の取得を目指しているからです。
仕事で直面した最先端の課題を研究に活かす
LinkedInでも折に触れて書いていますが、インデックスストラテジーは海外における社会インフラやスマートシティの計画や整備、運営に関するマネジメントやコンサルティング業務を手がけています。
具体的に言うと、海外の政府などに社会インフラやスマートシティのPPP(Public Private Partnership:官民連携プロジェクト)を提案し、実際にプロジェクトを組成。建設後に管理運営していくというビジネスです。
具体的に言うと、海外の政府などに社会インフラやスマートシティのPPP(Public Private Partnership:官民連携プロジェクト)を提案し、実際にプロジェクトを組成。建設後に管理運営していくというビジネスです。
足元では、ガーナにおける有料道路コンセッション事業やフランス領ニューカレドニアにおける再生可能エネルギーと蓄電池を活用した電力マネジメント最適化プロジェクトなどが動いています。また、モンゴル・カラコルムでのスマートシティプロジェクトにも応札しており、今年8月にも結果が出る予定です。
世界のインフラ市場を見渡せば、道路や橋梁、上下水道、スマートシティなどの社会インフラにPPPを活用して整備する流れができていると言っても過言ではありません。こうした社会インフラの整備には多額の資金がかかるため、新興国や途上国を中心に、整備はODAのような公的な資金と民間資金を組み合わせ、完成後の運営は民間に委ねるという形が一般的になっています。
しかも、社会インフラ整備を通して、その国が抱える社会課題の解決を進めようとする国も増えています。
例えば、ガーナの有料道路コンセッションであれば、道路インフラの整備とともに、エネルギー利用の効率化を実現する住宅建設のような沿線開発がセットになっています。ニューカレドニアも再生可能エネルギーと蓄電池の利用を通して、割高な電力価格の逓減とCO2の排出削減を実現しようとしています。
インデックスストラテジーはこういったプロジェクトの実証実験や実現可能性調査などを進めているため、大学の研究室でもなかなかできないような最先端の研究現場がいろいろとあります。
実務で最先端の課題に取り組む強み
事実、池戸の研究テーマは、海外の島嶼開発途上国における統合的な水資源管理の汎用評価モデルの構築。よりかみ砕いて言うと、水資源が限られている島嶼国において、生態系などの維持のような、従来は評価項目として反映されていなかった項目を踏まえた評価モデルを構築するという内容です。
経済と環境の両面で開発効果や社会的な影響をモニタリングする仕組みを実際のプロジェクトを通して作り上げていくのは、インデックスグループとしても価値があること。そのため、博士後期課程の学費はインデックスで負担することにしました。今後は、池戸を一つのモデルに、社内の社員育成プログラムとして博士後期課程プログラムを導入しようと思っています。
個人的には、こういう実業に直結した社会人の博士号取得はもっと増えていくべきだと思います。民間企業や公務員でも、雇用側が積極的に取り入れ推奨すべきでしょう。
私が政策顧問を務める愛知県でも、知事の特別秘書を長年勤めた荒川潤さん(現政策企画局政策調整監)が特別秘書を務めながら、有料道路コンセッションのモニタリングを研究テーマに博士号を取得しました。大村知事も、積極的に後押ししました。
インデックスストラテジーがそうであるように、博士論文に資するようなテーマで仕事をしている社会人はたくさんいると思います。特に、社会工学のような分野の場合、実務で最先端のビジネスをしている人の方が強いかもしれません。
こうした社会人の実務と経験を評価し、博士課程の受け入れを強化しようと考える大学も増えています。私が理事を務める国立大学法人・東京農工大学もそうです。
海外では名刺代わりのPhD
農工大の場合、大学院に進学する比率は農学部と工学部をあわせて8割近くに達します。女性の比率も多く、農学部では女性が半数を超えています。工学部でも、女性比率は40%と、全国の理系国公立大学の中でもトップクラス。女性起業家の育成にも注力しています。
こうした大学院に進む人の中には、当然、社会人もいます。大学は、世界最先端の研究環境を整備するため、スタートアップ事業を含め、社会実装に向けた取り組みを学長自らが旗を振り、推進しています。
残念ながら、日本では博士号の価値はそれほど高くなく、企業や官庁での評価も今ひとつのようですが、海外では逆です。私が会う機会の多い海外の企業経営者や国の高官で名刺に博士号(PhD)を刻む人はたくさんいます。博士号を持っているかどうかで仕事のしやすさは大きく変わります。
私もPPPやPM(プロジェクトマネジメント)、CM、契約発注方式などの分野における知見はアカデミズムの方々に負けないという自負がありますので、時間が許せば、早期修了プログラムを受けたいと思っているくらいです。
現実的な話をすれば、会社での実務と博士号取得を両立させるのは本人にとっても会社にとってもかなりの負担ですが、こういう社会人の博士号取得が進めば、日本の企業も変わるでしょうし、グローバルでの活動も優位になり日本の存在感を高められるのではないかと感じています。
【2024年7月19日掲載】
※このレポートは2024年7月10日にLinkedInに掲載したものを一部編集したものになります。
WRITERレポート執筆者
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植村 公一
代表取締役社長
1994年に日本初の独立系プロジェクトマネジメント会社として当社設立以来、建設プロジェクトの発注者と受注者である建設会社、地域社会の「三方よし」を実現するため尽力。インフラPPPのプロジェクトマネージャーの第一人者として国内外で活躍を広げている。
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