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建設プロジェクトマネージャーとは何か(5)

阻害要因を解消するため法律改正を働きかける場合も
 
プロジェクトでは、プロジェクトチーム以外にも、設計事務所、ゼネコン、下請けなど多くの関係者が関わります。プロジェクトを成功させるためには、阻害要因を見つけ出して、解決していきます。その過程で、すべての関係者をマネジメントしていく必要があります。道路建設で言えば、国交省の道路局や建設部もマネジメントの対象です。
 
老朽マンション建て替えのために法改正を実現
 
関係者の中でも非常に重要なのが、発注者です。中には、「安く買いたたければいい」と考える発注者もいます。しかし、中長期の視点で考えたとき、瑕疵のリスクが高まることを考えれば、それが必ずしもいいプロジェクトになるとは限りません。杭偽装マンションのように、かえって高くつくケースもあるはずです。「三方よし」の考え方が、結局のところ発注者の利益につながります。

仕様のバランスや必要な投資額を考慮したとき、やめるべきプロジェクトもあります。プロジェクトマネージャーは、発注者に対して、やめるべきはやめるとはっきり言える存在でなくてはなりません。

プロジェクトマネージャーは、目標実現への阻害要因となっている法律や制限を変えていくよう働きかけることもあります。

以前、東京原宿のビンテージマンション「コープオリンピア」の建て替えプロジェクトに、管理組合のプロジェクトマネージャーとして関わった際、法律が問題になりました。区分所有法では、マンションの建て替えには、議決権(持分)と面積でいずれも5分の4以上の賛成が必須です。コープオリンピアは組合員の約9割が建て替えに賛成していたものの、この建物は低層階が商業施設の建物でした。その商業施設の持ち主一族が、広大な床面積を所有していたため、議決権ベースで、賛成が5分の4を上回ることができなかったのです。

これではいつまでたってもプロジェクトが進みません。そこで、「法律を変えるしかない」という結論に達し、老朽化マンション対策会議を立ち上げ、建て替えの要件を緩和させる法改正を訴えました。5年かかりましたが、最終的には、条件付きながら法律を改正し、区分所有関係の解消制度を新設することに成功しました。プロジェクトマネージャーは、法改正まで踏み込むのです。

プロが解説!プロジェクトマネージャーの仕事術(6)」に続く
 

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