REPORTレポート

代表植村の自伝的記憶

ある起業家の「自伝的記憶」(7)

プロジェクトマネージャーをメジャーな仕事に
 
1994年に創業して以来、インデックスコンサルティングはいわゆる「植村商店」として発展してきました。オーナーは私で、私が最前線で陣頭指揮を執る。よくあるオーナー企業の姿です。ただ、4~5年前から、この形を続けていては夢を実現することはできないと思うようになりました。
 
江戸時代には「悉皆屋(しっかいや)」と呼ばれる職業がありました。仕立てや染み抜き、洗い張り(着物を反物の状態に戻してから水洗いする作業のこと)など、着物に関するさまざまな注文を大阪で受け、京都の専門店に取り次ぐ仕事です。そして、悉皆という言葉には「ことごとく」や「残らず」という意味があります。つまり、悉皆屋は着物に関するあらゆるニーズに、構想力を持って対応していたということです。
 
悉皆屋は、今の時代で言えばプロジェクトマネージャーです。インデックスの場合、コンサルタントは新規の建設プロジェクトや既存施設、社会インフラという切り口で、顧客の悩みを聞き、専門家の知識や技能を集めて顧客の課題を解決しています。
 
このように、プロジェクトマネージャーは大きな可能性を秘めた素晴らしい仕事です。それゆえに、私は建築におけるプロジェクトマネージャーを設計士や施工技士のような一般的な職種にすべく尽力してきました。ただ、まだ建築のプロジェクトマネージャーは人口に膾炙しているとは言えません。社会インフラの官民連携(PPP)プロジェクトをまとめ上げるPPPクリエイターに至っては、ほとんど知られていない状況です。
 
発注者の代理人として、発注者の立場からプロジェクトを最適化し、それを担うプロジェクトマネージャーを建設や社会インフラ、ファシリティマネジメント(FM)のフィールドで育てるという目標が私にはあります。そのためには、第一に建設PM市場をもっと大きくし、プロジェクトマネージャーの価値を知ってもらう必要があります。

ただ、私が陣頭指揮を執る植村商店のままでは限界があります。そこで、インデックスグループの各本部や子会社に有能な責任者を置き、権限委譲を進めることにしました。“脱”植村商店を掲げる実質的な分社化です。
 
建設ライフサイクルのすべてに対応する
 
具体的には、教育や医療福祉、地方創生、社会インフラPPP事業の企画段階から参画し、建設~施設の維持管理適正化を行う「インデックスコンサルティング」に加えて、エンジニアリングレポート(ER)の作成やQS(Quantity Surveyor)と呼ばれるコストマネジメントサービスを提供する「インデックスエンジニアリング」、オフィスのファシリティマネジメントを代行する「インデックスファシリティーズ」、社会インフラへのAI(人工知能)アプリケーションを開拓する「社会システムデザイン」、そして海外における社会インフラPPPの案件発掘や組成、投資を担う「インデックスストラテジーズ」の5子会社です。
 
インデックスグループの強みは、事業企画の支援から始まり、建設プロジェクトの最適化や建てた後のファシリティマネジメントまで、建物のライフサイクルの上流から下流に至るあらゆるサービスをワンストップで提供できるところにあります。その強みを最大化するため、それぞれの責任者が事業を伸ばし、それぞれの社員が自身の能力を最大限発揮できる働きがいのある環境を整備するために分社化したということです。
 
私はといえば、グループのCEO(最高経営責任者)として、グローバル展開やM&Aを含めたグループの成長戦略に注力していきます。それぞれの責任者がそれぞれの領域で事業を拡大させていけば、建設や社会インフラ、FMの領域におけるプロジェクトマネージャーは一般的な職種になっていくでしょう。悉皆屋、すなわち日本のプロジェクトマネージャーが世界を舞台に活躍する日が来ることを、心の底から願っています。

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