REPORTレポート
面白いほどよく分かるファシリティマネジメント講座
FMコラム:第17回日本ファシリティマネジメント大賞 入賞発表|面白いほどよく分かるファシリティマネジメント講座10
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大変幅広い内容のファシリティマネジメントを理解していただくために、これまで当講座で、日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)が主催する日本ファシリティマネジメント大賞の最優秀賞受賞先を中心に、いくつかの事例をご紹介してきました。
今年度も、昨年末12月半ばに、2022年度 第17回日本ファシリティマネジメント大賞の発表が行われ、8件(民間5件、公共2件、個人1件)が受賞されました。受賞された皆さん、大変おめでとうございます。
しかし、残念ながら、今年は、最優秀ファシリティマネジメント賞(鵜沢賞)および技術賞の該当先はありませんでした。過去にも数回、同様の年があり、それだけこの賞は、審査が厳しく、受賞がなかなか難しい賞であるということにほかなりません。決して、ファシリティマネジメント(FM)自体が難解で取り組みにくいということではありませんが、やはり受賞レベルになるには、かなりの努力と工夫が必要ということでしょう。とくに、この賞の評価ポイントが、日経ニューオフィス賞のような作品に対する評価ではなく、FMのPDCAサイクルを回し、FMの品質・財務・供給の目標が継続的に評価・改善されているかどうかにあることが受賞を難しくしているのかもしれません。
それでは、そのような高いハードルを越えて、どのような先が受賞されたのか、ご紹介したいと思います。
優秀FM賞
FMの手法を取入れ優れた成果を上げている活動を行っている先として、次の3社が、それぞれの応募タイトルで受賞されました。
・第一生命保険株式会社
<第一生命のファシリティ活用を通じた社会価値創造取組の推進>
1902年創業以来の社会貢献重視の企業姿勢に基づき、SDGsへの取組みと連係させ、「収益性と社会課題解決の両立を図る新たな社会価値創造への取組み」として行った多岐にわたるFM 活動。保有不動産への保育所誘致による待機児童数削減への貢献、 RE100 早期達成、専用施設による再エネ調達、自社施設を活用したワーケーションによる地域活性化、働き方改革と連動する本社の大規模リノベーション、地域住民のウェルビーイングを高めるまちづくりを目指す福利厚生グラウンド再開発事業など。FM の品質・財務・供給の目標と評価も適切で、継続的に改善されている。
・株式会社村田製作所
<みんなとみらいのオープンイノベーションに向けたFMの取組み>
横浜みなとみらい地区に自社ビルとして新設された、大手電子部品製造メーカーの東日本最大の研究開発拠点(MMIC)におけるFMの取組み。人を活かすエンゲージメント向上・地域を含めたブランディングの魅力度向上・未来指向の運営維持を目指しており、施設戦略立案・プロジェクト実行・運営維持が計画的、戦略的に進められている。自社製センサー活用によるDXで施設管理業務が効率化されている。
・イオンディライト株式会社
<本社移転による「DX活用のFMオフィス」づくり>
顧客へのFMサービス業務に関して日本初のISO41001認証を取得した企業の自社本社オフィスにおけるFM活動。築50年以上のビルをリノベーションして3か所に分散していた本社機能を統合化、効率化と同時に働き方改革と連係するワークプレイス改善、築古ビルの省エネと施設長寿命化の課題対応、危機管理センターの代替機能付与によるBCP対応など実施。
特別賞
FMに関する優れた成果をあげ、特別に表彰すべきと認められる活動等を行っている先として、それぞれの応募タイトルで、次の2社が受賞されました。
・大和ハウス工業株式会社
<地域と共創し、革新的な人材を育成する学び舎 コトクリエ>
・福島県大熊町
<帰還困難区域の旧小学校を活用したインキュベーション施設の構築>
功績賞
FMに関する優れた論文、出版、その他の活動を表彰するもので、次の方がその博士論文について受賞されました。
・久保井 大輔 (東京電力ホールディングス株式会社)
<修理系モデルによる空調設備保全計画に関する研究(博士論文)>
奨励賞
優秀ファシリティマネジメント賞、技術賞または功績賞に準じ、今後の発展が期待される活動を行われている先として、次の2社がそれぞれのタイトルで、受賞されました。
・グリー株式会社
<「従業員のためのオフィス」Wellbeingの追求>
・岡山県津山市
<負債から地域資産へ FM+PPPによる持続可能な公共施設マネジメント>
今後、本年度の受賞先の事例も、順次この講座で事例としてご説明していく予定をしていますが、今回の応募状況や審査の過程、受賞先に関する講評詳細については、下記をご覧ください。
また、授賞式や、受賞者による受賞講演が、2月17日(金)から開催される第17回日本ファシリティマネジメント大会(ファシリティマネジメント フォーラム2023、通称JFMAフォーラム2023)のプログラムとして行われます。
各受賞者による受賞講演については、オンデマンド配信されますので、ぜひご覧いただきたいと思います。
・配信期間:2023年2月20日(月)10:00 ~ 3月13日(月)正午
・視聴申込方法については、日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)のHPをご覧ください。
来年度以降、皆さんも、この日本ファシリティマネジメント大賞に、ぜひチャレンジしてください。毎年7月にエントリー開始、8月末が応募締切です。
WRITERレポート執筆者
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古阪 幸代
インデックスコンサルティング 顧問
富士銀行在職中に、ファシリティマネジメントに出会い、米国コーネル大学大学院で研究。シリコンバレーでのコンサルを経て、同銀行に復職し国内銀行初のFM部門を設立。コンサルタントに転身し、Genslerで東アジアの各社をコンサルした後、インターオフィス、明豊ファシリティワークス、三機工業等で代表・役員としてコンサル活動を継続。文科省・国交省・各種団体の委員・役員も歴任。自らもオフィスづくりに関わるネットワークWFMを1997年から主宰。会員600名超。一貫して、人を中心においた働きやすい環境を、経営戦略的に計画・構築・運営する戦略的FMを提唱・推進している。講演・執筆も多数。
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