REPORTレポート

リサーチ&インサイト

プロジェクトマネージャー認証制度創設

自治体にこそ必要な真のプロジェクトマネージャー 
 
 
愛知県が国際展示場「Aichi Sky Expo」や体育館(アリーナ)の建設で民間資金を活用したように、PPP(Public Private Partnership:官民連携)の手法を用いて社会インフラを整備しようと考える地方自治体は今後、増えていくでしょう。民間資金を活用し、費用対効果を考えて社会資本整備を進めることは、少子高齢化と人口減少が進む日本にとって不可欠だからです。
 
ただ、今後のPPPの拡大を考えた時に、ボトルネックになると考えている点があります。それは、実際にプロジェクトを差配できる真のプロジェクトマネージャーが地方自治体に存在するかという疑問です。
 
プロジェクトマネージャーとは、読んで字のごとくプロジェクトを調整、管理する専門家のこと。建設プロジェクトでいえば、「どんな建物や社会インフラをつくり運営するか」という企画構想の段階から参画し、企画案の妥当性や事業収支を分析したり、関係者間の合意形成を支援したり、設計事務所や建設会社を選定したり、最適な発注方式や運営方法を考えたり、スケジュールや予算が当初の計画通りに納まるよう施工にまつわるコストや工期、品質を管理したりと、プロジェクトを成功に導くために、様々なことをバランスよくサポートする存在です。
 
もちろん、地方自治体の職員にプロジェクトマネージャーの業務を求めても、すぐに対応することが難しいのは分かっています。必要なのは、地方自治体の職員をサポートするプロジェクトマネージャーと、実際のプロジェクトを通してプロジェクトマネージャーが地方自治体の若い職員を育成する仕組みです。
 
もっとも、現状では地方自治体が公共・社会インフラにPPPを活用し、建築・建設に新たな発注方式を取り入れたいと思っても、それに特化したポテンシャルある外部人材と出会うのは容易ではありません。
 
 
 
資格認証制度を構築した理由
 
 
こういった自治体とプロジェクトマネージャーのマッチングの課題を解消するため、私が副会長を務める一般社団法人 建設プロジェクト運営方式協議会(CPDS)では、「マスターオブPM(MPM)」という資格認証制度を構築しました。建設や社会インフラの分野において、高度なマネジメントスキルとノウハウ、実績を持つ人材をCPDSが認証し、自治体関係者など一般に向けて情報を開示するという取り組みです。
 
日本コンストラクション・マネジメント協会(CMAJ)も認定コンストラクション・マネジャーという資格を作り、資格試験を実施しています。コンストラクション・マネジメント(CM)は設計や施工に関して技術的な側面からプロジェクトを管理することが主な業務であり、認定試験も知識を問うものが中心です。
 
それに対して、CPDSのMPMではプログラムマネジメントや戦略の立案・構築を含むプロジェクトの過去の実績と経験を重視します。認証基準も、過去にどういったプロジェクトに関わり、発注者側のリーダーとしてどのように事業を成功に導いたかという点を見ます。プロジェクトマネージャーは専門知識やノウハウだけでなく、プロジェクト全体の構想力や利害関係者をまとめ上げる人間力が不可欠です。こういった能力を見ていく上で重要なのは、どのようなチャレンジングなプロジェクトを率いてきたかという点です。
 
東日本大震災以降、東北の復興や各地の地方創生、あるいは様々なインフラの民営化事業に官側のアドバイザーに就いたり、企業コンソーシアムの組成に携わったりした人たちは大勢います。また、都市再生機構(UR)や国交省の地方整備局などで経験を積んだ現役社員やOB、あるいは分野は違えど企業再生やM&Aなどを手がける中で社会貢献に目覚める若者も少なからずいるでしょう。こういった人々がMPMの候補です。
 
 
 
社会システムの変革で得られる満足感
 
 
第一弾のMPMとして、この5月に5人の認証を発表しました。日本郵政で主席建築家を務める黒木正郎氏、慶應義塾大学の清水雅彦名誉教授、日鍛バルブの元社長である高橋久雄氏、アメリカズカップのテクニカルディレクターを務めた東京大学の宮田秀明名誉教授と私です。私はともかく、様々な分野で困難なプロジェクトを成功に導いた経験を持つ方々ばかりです。
 
社会システムの再構築が必要になる中、最も影響を受けるのが地方自治体です。地方の公共・社会インフラの多くが更新時期をむかえており、更新や運営など莫大な費用の削減を迫られるからです。こうした費用をまかなう仕組みがPPPであり、費用を削減する仕組みがプロジェクトマネジメントです。プロジェクトを通じて社会に貢献する喜びと、社会システムの変革を実践する満足感がPPPにはあります。
 
今後、毎年5~10人の人材をMPMとして認証していこうと考えています。MPMになり得る人材の多くは、企業や団体の組織の中にいたり、独立したりしていますが、プロジェクトマネージャーの資質を持つ優秀な人材がプロジェクトを通じて活躍できる場を作り上げ、社会に繋げていければと考えています。ご関心のある方がいれば、ぜひお声掛けください。

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