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遊びは創造⼒のインフラ

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2009年8⽉
 
7、8⽉はバケーションの季節だ。⼤学の研究室の活動の中でも、⼀度気分転換して教員と学⽣、それに学⽣間の信頼関係を築く時期でもある。だから、この時期に は毎年1泊2⽇の研修旅⾏を⾏う。
 
今年は7⽉18⽇と19⽇に総勢31⼈で伊⾖に⾏った。研究の討論が中⼼だが、夜には飲み明かして、最終⽇の午後は全員参加のテニス⼤会になる。ちょうど17年前、教授に昇任した私を祝って、その時の学⽣たちがアメリカズカップにならったミヤ タズカップのテニス⼤会を始めてくれたのだ。未経験を含めた全員がダブルスの試 合をトーナメント形式で⾏い、カップを⽬指すのだ。
 
44歳の時に始めたテニスもそこそこうまくなって、中級から上級の境い⽬の腕前になっている私なので、研究室のテニス⼤会では優勝候補に上ることもある。だが、今年は違った。新しくメンバーになった4年⽣と修⼠1年⽣にテニスサークル所
属の学⽣が多かったのだ。「S君はかなりうまい」という前評判だった。学内テニス⼤会で好成績を残したらしかった。
 
昨年は「負けませんよ」と⾔った修⼠1年⽣のM君を⾒事に打ち負かして悦に⼊っていたのだが、今年は駄⽬だった。2年⽣になったM君をパートナーにしたS君と対 戦したのは最後の試合だった。私のパートナーのMT君が頑張ってくれたのだが、完敗だった。
 
スポーツやレジャーがなければ仕事はできなかった
 
スポーツもレジャーも、⼈⽣のうえで⾮常に⼤切なことである。ほとんど仕事中毒⼈間になってしまった私でも、テニスというレジャーに出会えていなかったら、アメリカズカップをはじめ⾊々な難しいプロジェクトのマネジメントはできなかったかもしれない。
 
何より健康と元気が⼤切なのだ。経済不況を乗り越えるためにも、この夏休みはたくさん楽しんで英気を養うことがいいと思う。
 
⼤学院を卒業して⽯川島播磨重⼯業(現IHI)に⼊社する時、配属⾯接があった。⼈事部が考えた私の最初の配属先は、兵庫県相⽣市にある造船所の詳細設計部だった。私は船の全体設計を担当する本社の基本設計部を希望していた。
 
⼈事部員は⾔った。
 
「真藤さん(船舶事業部出⾝の社⻑)を⽀える仕事をしてほしいから、まず⼯場設計から⼊ってほしいのです」
 
修⼠2年⽣だった私は、その⼈事部員を説得して、結局、本社の船舶基本設計部に配属された。この説得に成功しなかったら今の私はないかもしれない。5年間の船全体の設計の経験は、その後私が仕事をしていくうえで貴重な財産になった。
 
⼤⼿町の本社に勤めはじめて3カ⽉ぐらいたった頃、私の配属⾯接をした⼈事部員に呼び出された。借りのある先輩社員だ。彼は私に仕事を依頼したかったのだ。
 
「本社レクリエーション会の活動をしてほしい。君みたいな⾼学歴の社員が中⼼にならないとうまく機能しないんだ」
 
確かにレクリエーション会の活動は低調で、主催するイベントに参加する社員も限られていた。
 
会社のレクリエーション活動を引っ張った4年間
 
それから4年間、私は⼈事部主体のレクリエーション活動と草野球が、週末の⾏動パターンとして定着してしまった。会社の主催する様々なレクリエーション活動を  企画して実⾏するのがレクリエーション会の仕事だった。ボーリング⼤会、ソフト  ボール⼤会、スキーバスは定番だった。富⼠⼭登⼭やJR⼭⼿線1周ウォークラリー  というイベントもあった。
 
富⼠⼭登頂イベントでは⾼⼭病のことを⽢く⾒ていた。3⼈が⾼⼭病になったのだ。動けなくなった⼥性を友⼈と2⼈で⽀えて、須⾛を⼀気に⾛り下りることになった。さすがにヘトヘトに疲れたが、彼⼥は下⼭すると⼀瞬にして元気になった。
 
JR⼭⼿線は1周するとちょうど35キロぐらいだ。だから歩いて回ると10時間ぐらいかかる。夜の8時に東京駅前をスタートして、10カ所ほどのチェックポイントを 通過して、朝、⼆重橋前にゴールする。5⼈ほどのチームを組んで歩くのだが、1⼈が⾏⽅不明になってしまった。⾼校を出たばかりの若い⼥性社員だった。疲れて途 中で⾃宅に帰ってしまっていたのだが、私たち主催者は⼤騒ぎした。
 
1⼈でできる仕事は限られている。だからチームを作ったり、協⼒関係を作って仕事をすることはごく⼀般的なことだ。チームワークである。チームワークで⼤切な  のは尊敬と信頼だ。チームのメンバー1⼈ひとりのプロとしての仕事、⾃分にはできない仕事を成し遂げていることに対する尊敬を持って、それぞれの担当の職務に対して信頼する関係を作ることが⼤切なのだ。
 
仲間と共通の体験をするのは⼤きな財産

この時、チームのメンバーと仕事以外の世界でも共通の体験をしていることは、⼤きな⼒になる。尊敬と信頼を⾼めてくれるのだ。趣味やスポーツがいいと思うのだが、それがなければ単なる飲み友達でもいいと思う。
 
アメリカズカップの仕事をしていた時、ニュージーランドを何度も訪れた。そこで感じたのはニュージーランドの⼈々の⽣活の豊かさだった。1⼈当たりGDP(国 内総⽣産)は決して⾼くないのだが、みんな⼼が豊かなのだ。仕事の合間にいろいろな⼈と話す。タクシーの運転⼿だったり、アルバイト中の⼥⼦⼤⽣だったり、クルーのお⽗さんだったりするのだが、ほとんど例外なく彼らの趣味はセーリングなのだ。国全体が⼤きなセーリングクラブになっているかのようだった。
 
豊かな⾃然と少ない⼈⼝の恩恵を受けているうらやましい国である。
 
しかし、私たちも負けないようにしよう。しっかり楽しんで、レクリエーション、スポーツ、趣味を⼤切にしよう。創造⼒の⾼い⼈は趣味豊かな⼈である場合も多い。遊びは創造⼒のインフラかもしれない。
 
これから夏休みが本番に⼊る。読者の皆さんもたっぷりバケーションを楽しんでほしい。
 

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