REPORTレポート

代表植村の自伝的記憶

白紙に戻ったベトナム有料道路PPP

【2024年7月5日掲載】
※このレポートは2024年7月1日にLinkedInに掲載したものを一部編集したものになります。
 


少し古い話になりますが、2024年5月半ばにベトナムに行ってきました。ベトナムの大手国営企業を管理する国家資本管理委員会(CMSC)や高速道路開発投資総公社(VEC)、交通運輸省の幹部と会談することが目的です。
 
◎CMSCのリリース(ベトナム語) 
 
以前のレポートでも書きましたが、インデックスグループはベトナムで有料道路コンセッションを進めてきました。ベトナム第二の都市、ホーチミン市から建設中のロンタイン国際空港を経て、ゾーザイに至る有料道路が主な区間で、ホーチミンからロンタインまでの既存5車線を10車線に拡幅し、日本側の民間資金と運営ノウハウを導入することが柱です。

ベトナム政府にコンセッションを提案したのは2016年ですから、もう8年間も取り組んでいることになります。
 
◎海外PPPで知った民間の提案を生かす仕組み(Index)
 
2年ほど前のレポートで、ベトナム政府が主導する国営企業改革と、それに伴うVECの再編計画に時間がかかっており、本調査に当たるFS(フィージビリティスタディ、実行可能性調査)に着手できていないという話を書きました。その後、VECと基本合意書(MOU)を締結し、日本側の提案を提出しましたが、このたび、路線の拡幅についてはVEC自らが金融調達を行うということが決まりました。

日本側の提案、すなわち路線の拡幅+コンセッションは採択されなかったということです。コンセッションの場合、今のPPP法の範囲では制約が生ずる可能性があること、そして資金調達に時間を要するという2点が理由でした。

ベトナム政府が決めたことですので仕方のないことではありますが、事業契約の寸前までいっていただけに、正直、残念に思うところはあります。
 
ベトナムで吹き荒れる「反腐敗・反汚職」
 
この8年を振り返ると、この数年はベトナムで吹き荒れている「反腐敗・反汚職」に翻弄される日々だったように思います。

ベトナム共産党の最高指導者グエン・フー・チョン党書記長が進める「反腐敗・反汚職」によって、共産党や政権の幹部が次々と更迭されています。この8年間、ベトナムには数十回、通いましたが、お目にかかった幹部が何人も捕まりました。表向きは「反腐敗・反腐敗」のキャンペーンですが、チョン氏が率いる保守派と急進派の派閥争いだとみられています。

ベトナムの政治や社会にとって「反腐敗・反汚職」はもちろん必要なことですが、何か新しいことに挑戦すると汚職などで捕まる恐れがあるため、政治家や官僚はリスクを冒さず何もしないという反応になっていました。それも、私たちの提案であるコンセッションがなかなか進まなかった要因だと感じています。

米中露の摩擦が激化する中、日本や日本企業にとってベトナムの存在感は高まっています。国政が権力争いによって身動きが取れなくなっているのであれば、政治面にとどまらず、民間の経済活動にも悪影響が出かねません。

ただ、先進国入りを目指すベトナムにとって、インフラ整備は経済発展と直結する重要な国家戦略の一つです。インデックスグループとVECは、高速道路交通事業の管理や運営、投融資に関してMOU(基本合意契約書)を締結していますので、あきらめずに別の形でベトナムの有料道路とかかわっていくつもりです。

具体的に言えば、国やVEC、地方政府が整備した有料道路の運営などの分野です。実際、CMSCの副会長からも、VECの再生を運営・管理(Operation & Management:O&M)ビジネスと資金調達の両面で一緒に取り組んでほしいと言われています。
 
◎ベトナム高速道路開発投資総公社および前田建設工業とMOU締結(Index Strategy)
 
まともにフィーも取れないのに、先行き不透明な事業に8年間もかかわる奇特なコンサルはあまりいませんから、CMSCをはじめ、ベトナム政府の信頼を得ているという実感は今回の訪越でも強く感じています。引き続き、日越関係のさらなる強化をインフラPPPで目指していきます。

そして、海外でのインフラPPPプロジェクトは、当社だけでなく日本企業にとって唯一無二の成長市場だと考えているので、ここでへこたれず、パイロットプロジェクトの実現に向けて前進していく所存です。

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