REPORTレポート
代表植村の自伝的記憶
グローバルな産業展“SMART MANUFACTURING SUMMIT”で感じたこと
2024年3月13日から15日の3日間、愛知県のAichi Sky Expo(愛知県国際展示場)であるイベントが開催されました。「SMART MANUFACTURING SUMMIT(SMS) BY GLOBAL INDUSTRIE」 世界最大級のイベント運営会社、仏GL eventsが開催している欧州最大級の産業展「グローバルインダストリー」の日本版です。
愛知県は自動車や航空機、ロボットなど日本のものづくり産業が集積した日本の「産業首都」と言える存在。2024年10月には、日本最大のスタートアップ支援拠点「STATION Ai」の開業も控えています。
その愛知県の強みをさらに磨くべく、EVや水素自動車、AI、IoT、ロボットなどに関する日本やヨーロッパの最先端技術を集めた産業展示会を開催したのです。このSMSには、展示会だけでなく、国内外の企業とスタートアップが出会うマッチングの場としての役割もありました。
SMSを主催したGL eventsは、日本初の展示場コンセッション(※)として知られるAichi Sky Expoのコンセッション事業者。自身が手がける初の大型主催事業として、グローバルインダストリーの日本版となるSMSを開催しました。
(※コンセッションとは、PPP(Public Private Partnership:官民連携)の手法の一つで、公共施設の運営権を中長期にわたり民間企業に授与する仕組み)
途中、新型コロナウイルスの感染拡大などのために海外の大型主催事業の計画が中断した時期もありましたが、私も愛知県の政策顧問としてAichi Sky ExpoのコンセッションやSMSなどに関わってきただけに、こうして第1回を開催することができ、本当に嬉しく思います。
期間中は日本企業250社、海外企業50社超と、約300社の企業やスタートアップなどが出展しました。海外企業はグローバルインダストリーのお膝元であるフランスはもとより、ドイツ・NRW州などEU各国、さらにカナダなどからも出展いただきました。
開催初日には、齋藤健・経済産業相やフランス政府のロラン・レスキュール産業・エネルギー担当大臣からも素晴らしいメッセージも届くなど、それぞれの国の政府にとっても重要度の高いイベントだったように思います。
また、企業だけでなく、フランスのオーベルニュ・ローヌ・アルプ(AuRA)地域圏のローラン・ボキエ議長や、オクシタニー地域圏のキャロル・デルガ議長など、愛知県と連携関係にある各国の要人にも足を運んでいただきました。
AuRA地域圏は産業が集積しているフランス最大の産業エリア。ワインで有名なオクシタニー地域圏も、エアバスが本社を置くなど研究開発やハイテク産業に力を入れています。そんな両地域のトップがわざわざ同時期に愛知県を訪問したのは、大村知事との日頃からの親交はもちろんですが、最先端の製造業が集まる愛知県の新たな取り組みに期待するものがあったからでしょう。
自治体同士の連携でイノベーションを生み出す次代に
例えば、AuRAとは、スタートアップ事業や水素エネルギー事業の分野で連携協定を結び、具体的なプロジェクトの実装に向け着々と動き出しています。AuRA地域圏のボキエ議長は今回の来県でジブリパークを訪問。オクシタニーのデルガ議長も常滑市の常滑焼の陶芸工房を訪問するなど、愛知県が誇るアニメや文化・芸術の分野にも大変に興味を示していました。
以前の記事「欧州歴訪で感じた一国のリーダーに上り詰めるプロセス」でも書いたように、今は自治体の首長自らが国を飛び出し、自治体同士で連携してプロジェクトを具現化し、グローバルなイノベーションを実現する時代です。
海外の自治体や地域が抱えている社会課題は気候変動、エネルギー、食料、イノベーションなどどこも似かよっています。その課題を共有し合い、解決できるグローバルな地域同士が手を結び始めているのです。
愛知県は大村知事のリーダーシップの下、AuRA地域圏やオクシタニー地域圏だけでなく、米テキサス州やドイツNRW州、フランス・パリ市、中国、韓国、イスラエルなどと、スタートアップ事業を核に、水素エネルギーや先端医療、スポーツ、文化・芸術などの分野で具体的なプロジェクトを始め、グローバルネットワークの拡大を図ろうとしています。
こうした動きを見ていると、プロジェクトを具現化する地方自治体が主体となってグローバルなネットワークを作るということが今の時代に求められていると感じます。
日本を見ると、大企業であれば海外の企業との連携を図るケースもありますが、中小企業とスタートアップ、あるいはスタートアップ同士などの場合、民間企業の自然発生的な動きに任せていては何も生まれません。
そこで、愛知県やAuRA地域圏のように地方自治体が主体となって、双方の大企業や中小企業、スタートアップが互いにコラボレーションできるような場作りを進める必要があるのです。もちろん、その背景には、産業中心の自治体や地域として、今のイノベーションの波に乗り遅れると衰退してしまうという危機感もあります。
愛知県がフォーカスしている地域は、今はヨーロッパや米国、ASEAN(東南アジア諸国連合)の一部が中心ですが、今後はインド太平洋の地域にも広がると思います。グローバル規模で進むイノベーションから取り残されないために、これからは地方自治体自らが積極的に動いていく必要性を今回のSMSで感じました。
また、常日頃から感じていることですが、私の専門分野であるインフラPPPでは、政府が新たな法律や制度を整えても、それを具体的なプロジェクトとして実現するのは地方自治体です。
時間はかかりますが、具体的なプロジェクトの成功が「見える化」されて初めて新しい法律や制度は他の自治体に広がるもの。愛知県が進めている海外の地方自治体との連携やイノベーションの実装が実現すれば、次世代に向けた変革の動きは国内でも加速すると思います。そのためにも、愛知県での取り組みを成功させないといけませんね。
【2024年4月5日掲載】
※このレポートは2024年4月3日にLinkedInに掲載したものを一部編集したものになります。
WRITERレポート執筆者
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植村 公一
代表取締役社長
1994年に日本初の独立系プロジェクトマネジメント会社として当社設立以来、建設プロジェクトの発注者と受注者である建設会社、地域社会の「三方よし」を実現するため尽力。インフラPPPのプロジェクトマネージャーの第一人者として国内外で活躍を広げている。
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