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高騰する鋼材価格の動向|建設市場レポート

鉄筋や鉄骨といった鋼材はマンションや事務所、商業施設、物流施設等を建設する際に多く使われる主要な資材です。その為、これら鋼材の価格が高騰すると資材コストや建築コストは影響を受け、結果として建築費の水準が上昇することとなります。具体的に、2006年から2008年までに鋼材価格が高騰した際、建築費の水準は大きく上昇しています。
 
異形棒鋼(鉄筋)、H形鋼(鉄骨)といった代表的な鋼材の価格は2020年より上昇傾向に入り、20219月現在も非常に高い水準と高騰しています。そこで、今回のレポートでは、鋼材価格が高騰している背景から、建設資材物価や建築コストへ影響、今後の鋼材価格動向など、以下の内容について紹介していきます。


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1. 鋼材価格の推移(2006年から現在まで)
下図は2006年から2021年9月までの主要な鋼材である鉄筋と鉄骨の価格推移を示しています。
インデックス 鋼材価格の推移(鉄筋および鉄骨)
まず、鉄筋と鉄骨の価格は2008年までに非常に大きく上昇しています。具体的に、鉄筋価格は2006年11月の60,000(円/t)から2008年7月の113,000(円/t)まで20ヵ月間で約83%以上も、また、鉄骨価格は2007年2月の76,000(円/t)から130,000(円/t)まで17ヵ月間で約71%以上と、これまでで最も高い水準まで高騰しました。その後、2010年1月までに鉄筋価格は53,000(円/t)、鉄骨価格は62,000(円/t)へと下落しています。
 
2010年以降は、鉄筋の価格は概ね50,000(円/t)から75,000(円/t)の範囲で、同様に鉄骨の価格は62,000(円/t)から89,000(円/t)の範囲で推移してきました。しかしながら、鉄筋は2020年6月の66,000(円/t)から2021年9月の91,000(円/t)まで、また、鉄骨は2020年8月の75,000(円/t)から2021年9月の109,000(円/t)まで、大きく上昇していることが読み取れます。
 
2. なぜ鋼材の価格が高騰するのか?
鋼材価格が高騰する主要な要因は原材料価格の高騰が挙げられます。鋼材は、電気炉で生産される場合と高炉で生産される場合があります。電気炉で生産される場合の原材料は鉄スクラップ(鉄くず)、高炉で生産される場合の原材料は鉄鉱石となります。
 
鉄筋は電気炉で生産されるので、鉄筋の原材料は鉄スクラップ(鉄くず)となります。そして、鉄筋価格と鉄スクラップ価格の推移を見てみると、鉄スクラップ価格の変動から3ヵ月から1年程度遅れる形で鉄筋価格が変動しており、原材料価格に影響を受けて推移していることが分かります。(下図参照)
インデックス 鉄筋価格と鉄スクラップ価格の推移
また、鉄骨は主に高炉で生産されるので、鉄骨の原材料は鉄鉱石となります。鉄骨価格と鉄鉱石価格の推移を見てみると、鉄鉱石価格の変動から半年から1年程度のタイムラグを経て、鉄骨価格が変動しており、原材料価格に影響を受けて推移していることが分かります。(下図参照)
インデックス 鉄骨価格と鉄鋼石価格の推移
このように、鉄筋や鉄骨の価格は、原材料である鉄スクラップや鉄鉱石の価格が高騰することに大きく影響を受け、また、タイムラグを経て上昇していることが分かります。
 
3. 原材料価格が高騰する背景
原材料価格は、海外における鋼材需要の状況に影響を受けて変動します。例えば、日本は鉄鉱石を国内で得ることが出来ないので輸入に頼っており、国外における需要が急増するなど、需給バランスが崩れると、取引価格が上昇します。
 
また、鉄スクラップは国内で豊富に確保できるものの、国外へ輸出もされているので、海外における取引価格が上昇すると、国内流通よりも高値で売れる海外輸出が選択され、結果として国内における価格も引き上げられます。
 
このように、鉄鉱石と鉄スクラップの価格は、共に海外における鋼材需給の状況に影響を受けて変動することとなります。
 
事実、2006年から2008年まで原材料価格が高騰した際は、中国における不動産開発をはじめとする経済成長が牽引し、世界における粗鋼生産量が2004年から2007年まで4年連続で対前年比8%以上の伸びと非常に大きく増加しています。

また、世界における2020年の粗鋼生産量は、新型コロナウイルスの影響もあり、対前年比で約0.2%増と横ばいでした。しかしながら、各国における経済活動の再開に伴い、2021年1月から8月までの粗鋼生産量は対前年同期比で10.6%増と急増していることが、現在の原材料価格高騰に影響を及ぼしていると考えられます。
 
4. 鋼材価格の高騰による建設資材物価や建築コストへの影響
ここで、鋼材価格が高騰した際、建設資材物価や建築コストへの影響がどの程度なのかについて見ていきます。
 
まず、建設資材物価への影響について見てみると、2006年1月から2008年8月までの鋼材価格高騰期に鉄筋価格が88%上昇した際、建設資材物価は13%上昇していることが分かります。また、2020年6月から2021年9月までに、鉄筋価格が38%上昇していますが、建設資材物価は14%も上昇していることが読みとれます。(下図参照)
インデックス 鉄筋価格指数と建設資材物価指数の推移
 
これら2つのケースを比較すると、前者の鉄筋価格上昇率は88%と後者の38%を大きく上回っているにもかかわらず、後者の建設資材物価上昇率は14%と前者の13%を上回っていることが分かります。これは、2006年から2008年までの鋼材価格高騰期は、その他の建設資材物価がほとんど上昇していなかったのに対して、近年は、いわゆる「ウッドショック」で木材価格が高騰しているなど、鋼材以外の物価も上昇していることが挙げられます。
 
次に、建築コストへの影響について下図を見てみると、2006年から2008年までに鉄筋価格が67%上昇した一方、建築コストは8%上昇していることが読み取れます。また、2020年6月から2021年9月までに、鉄筋価格が38%上昇していますが、建築コストは4%上昇していることが分かります。

鉄筋価格指数と建築コストの推移
このように、鋼材価格が高騰したケースを見てみると、建設資材物価は10%を超える上昇、また、建築コストでは約4%から8%程度上昇しており、建設資材物価や建築コストの上昇へ影響を与えていることが分かります。
 
5. 鋼材価格の今後の動向
最後に、今後の鋼材価格の動向について考察していきます。現在の鋼材価格高騰の主要な要因は、世界における鋼材需要の急増による原材料価格の上昇であることは前述しました。
 
そのため、大きくは、今後、世界における鋼材需要が益々増加し、原材料価格の上昇が続くことで鋼材価格がさらに上昇するケースと、鋼材需要が減少して、原材料価格が下落することで鋼材価格が下落するケースが考えられます。
 
そして、今後の世界における鋼材需要の動向は、中国における鋼材需要動向に影響を受けて変動すると考えられます。これは、下図に示すように、世界における粗鋼生産量のうち約57%を中国で占めているからです。
 
インデックス 粗鋼生産量のシェア

その中国ですが、2021年10月現在、中国における大手をはじめとする不動産会社の経営問題、電力不足による中国国内工場の稼働制限・停止など、中国経済は短期的に減速する見通しにあります。これに加え、中国政府は、CO2排出削減強化と2022年2月に開催予定である冬季北京五輪に向けた大気汚染防止の目的で、首都北京および周辺地区の鉄鋼産業に対し2020年11月15日から2022年3月15日まで4か月の間、粗鋼生産量を削減するように要請しました。
 
電力不足の問題が長期化し中国経済の減速が強まるだけでなく、粗鋼生産量の削減も中国政府の計画通り実現されるようであれば、原材料価格は下落へ転換する可能性が高く、その場合、3か月から1年程度のタイムラグを経て、日本国内における鋼材価格が下落していくのでないかと考えます。
 
一方、インド、日本、アメリカをはじめ、中国を除く世界各国で経済活動が加速し、世界における鋼材需要の増加が、中国における粗鋼生産量の減少を上回るようであれば、原材料価格は現在の水準からさらに上昇する可能性が高く、その場合、国内における鋼材価格は益々上昇するものと考えられます。
 
以上のように今回のレポートでは、現在高騰している鋼材価格について、鋼材価格が高騰している背景から、建設資材物価や建築コストへ影響、今後の鋼材価格動向など、様々な観点から紹介しました。

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