REPORTレポート

代表植村の自伝的記憶
UAE・アブダビも求める日本が誇る世界ナンバーワンのがん治療装置
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以前の投稿でもお伝えしましたが、インデックスはUAE(アラブ首長国連邦)の首都アブダビにある総合医療機関、クリーブランド・クリニック・アブダビと、重粒子線によるがん治療施設の整備について協議を進めています。
クリーブランド・クリニック・アブダビは、心臓、神経系、消化器系、眼、呼吸器系などの専門医で構成される、400床の病床を数える総合病院。米屈指の規模と先進性を誇るクリーブランド・クリニック(米オハイオ州)と同レベルの医療提供を目的に設立された医療施設です。
近年、がん治療、特に放射線治療に力を入れている同クリニックが日本の重粒子線によるがん治療に着目。2023年7月に、量子科学技術研究開発機構(QST)とクリーブランド・クリニック・アブダビを運営するM42との間で、重粒子線がん治療研究の分野に関して、MOC(研究協力の覚書)が締結されました。
その後、時間を要しましたが、2025年1月には、重粒子線治療装置を製造する東芝とクリーブランド・クリニック・アブダビとの間で納入に向けた覚書も締結されています。
◎東芝、UAEでがん治療装置の覚書 100億円規模受注へ(日経新聞)
重粒子線によるがん治療施設は日本に6カ所あります。その中で、最も新しい施設は2018年に治療を開始した大阪重粒子線センターです。
1994年に臨床試験を始めた千葉の放射線医学総合研究所(現QST)の装置を第1世代とすると、現在、日本国内で普及しているのはサイズを3分の1に小型化した第2、第3世代の装置です。
装置の小型化はさらに進んでおり、QSTで建設中の量子メス棟に整備される第4世代の装置は、第1世代よりも20分の1の大きさになっています。性能についても、マルチイオン照射によってさらなる高度医療が実現する見込みです。
現在は、この第4世代を上回る第5世代の実証機の技術開発も進んでおり、重粒子線を用いたがん治療装置の領域では、現時点で日本が世界でナンバーワンと言っても過言ではありません。重粒子線治療装置は、日本が世界で勝負できる極めて有望な技術だと感じています。
◎次世代重粒子線治療研究プロジェクト(QST)
志半ばで止まった高取町のプロジェクト
重粒子線治療装置は私にとって思い入れの深いプロジェクトなので、海外とはいえ、こうして具体化に向けて動き出したことは本当に嬉しく思います。というのも、重粒子線を用いたがん治療装置の導入は、もともと奈良県高取町で進めていたものだったからです。
高取町は地方創生の一環として、重粒子線がん治療装置を活用した医療ツーリズムを進めていました。世界的に評価の高い重粒子線によるがん治療と地域に残る歴史文化を軸に、海外の富裕層を取り込むという構想です。
現に、高取町は2015年に「たかとり重粒子線医療施設推進協議会」を設立。インデックスコンサルティングも国家戦略特区を申請した2018年から参画し、隣接する橿原市や明日香村、診療と研究を担当する奈良県立医大とも協議を進めていました。
ところが、旗振り役だった植村家忠元町長が2020年10月に急逝。具体化までもう少しというところでプロジェクトは止まってしまいました。重粒子線医療施設の誘致にかける植村元町長の想いは並々ならぬものがありましたので、諸事情があるにせよ、道半ばで止まってしまったことは返す返すも残念なことでした。
亡くなる直前に、病床で言われた「公一さん、重粒子線プロジェクトをよろしく頼む」という言葉は、町長の遺言だと思っています。
実は、亡くなられた植村町長と私は遠縁に当たります。植村家は三河の松平氏に仕えた武家一族で、私はその子孫に当たります。一方、三河の植村家から大和高取藩や勝浦藩の藩主になった一族もおり、大和高取藩第16代当主が植村家忠元町長でした。
私は幼い頃、祖母に連れられ、高取城に登ったことが何度もあります。偶然にも、重粒子の縁で町長との出会いが実現しましたが、同じ植村一族ということで、町長の想いは何としても実現させたいと今でも強く思っています。
その中で、アブダビのプロジェクトに出会ったことは、私にとっては一つの救いになりました。これを足がかりに、PPP(Public Private Partnership:官民連携)を活用した重粒子線がん治療装置の世界展開を進めていきたいと思います。
日本が誇る重粒子線治療装置というだけでなく、放射線を防護する特殊な建物や設備の設計、調達、建設(EPC:Enjineering、Procurement、Construction)、装置のメンテナンスや施設の維持管理、さらに放射線医療関係者のトレーニングや教育など運営面のサポートをパッケージにした重粒子線治療装置のPPPです。
もちろん、高取町のプロジェクトもまだあきらめてはいません。政治情勢など環境に左右されたり、場所が変わったりする可能性もありますが、町長の遺言を実現すべく、尽力したいと思います。
【2025年5月30日掲載】
※このレポートは2025年3月21日にLinkedInに掲載したものを一部編集したものになります。
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