REPORTレポート
面白いほどよく分かるファシリティマネジメント講座
事業活動に必須のファシリティとファシリティマネジメントとは|面白いほどよく分かるファシリティマネジメント講座01
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事業のスタートは紙とペン、スマホやタブレット
野原に寝転がって青空を眺めながら、将来の夢に向かって構想を練るひととき。思いついたアイデアを忘れないように、スマホ・タブレット・紙などに書き留めるときが、新しいビジネスの始まりです。
さらに具体的な事業活動をスタートするには、必ず何らかのスペースやツールが必要になります。活動拠点とする物理的なスペースに加えて、事業を登記するために、住所を持った具体的なスペースを、保有や賃借で準備しなくてはなりません。余談ですが、サービスオフィスや貸しオフィスなどで提供されているバーチャルオフィスサービス(住所貸し)は、こんなニーズから生まれたものです。
事業活動に必要になってくるもの
スペース(床・空間)は、一般的には建物の中にあり、そこで事業活動を行うには、照明・空調・電気などの環境設備や通信設備などのいわゆる「設備」と、机や椅子などの家具・パソコンやプリンターなどのICT機器・文具などの「什器・備品」が必要となります。会議室等の業務支援スペースや、トイレやカフェなどの生活支援スペースも必要で、そこで使う水道・ガスなどの設備も伴います。
何らかのモノを生み出す生産的な事業活動を行うためには、生産設備が必要であり、原材料や完成品を保管するための倉庫や、物流のためのクルマやその駐車スペースなどもいります。これらのスペースや設備など人が働くための場や環境は、オフィス・工場・店舗などの営利的な事業活動についてだけでなく、教育や医療、官公庁など、おおよそ「人が働く」という行為が発生するあらゆる状況において必要です。
ファシリティとファシリティマネジメントの位置付け
事業活動の拡大成長に伴い、それに関わる人が増え、その人たちが利用するスペースや設備、ツールはどんどん複雑化・多様化し、すさまじい勢いで量が増えていきます。それらは、企業・団体などの資産となり、それらを戦略的に計画し管理運営する行為を伴って、事業活動を支える基盤となっていきます。
こうして、事業活動において、ファシリティ(土地・建物・設備・ツールなど人々が関与する場や環境)が、ヒト・モノ・カネ・情報に次ぐ第5の経営資源となり、それを経営(計画・管理・運営・評価)するファシリティマネジメントが、人事・財務・ITに並んで事業活動を支える第4の経営基盤といわれるようになってきました。
企業・団体などにおいて、ファシリティに関わる経費は、実は人件費に次いで大きな額を占めているにもかかわらず、経営層は、なぜかファシリティへの関心が薄く、企業や団体などの組織全体での戦略的なファシリティマネジメントがあまり行われていないのが、日本における実情です。
企業・団体などの組織全体でいったいどれだけ不動産を保有しているのか、賃借物件の面積や賃料はどのくらいなのか、どの建物でどのくらいの光熱水費が発生しているのか、従業員一人当たりのスペースはどのくらいなのかなどの定量データや、オフィス・工場・店舗などは事業戦略に適した場所に立地しているのか、従業員はオフィス環境に満足しているのかなどの定性的なデータなど、ファシリティに関わるデータは広範多岐にわたりますが、実務的に、これらのデータがきちんと把握されていないことも事実です。
ファシリティは、企業・団体などの経営戦略・事業戦略を実現するための重要な経営基盤ですから、経営者も、ファシリティにもっと関心を払い、ファシリティに関わるいろいろなデータの概要については把握しておく必要があります。ファシリティに関わる実務者も、経営者にファシリティの実態をタイムリーに報告する責任があるといえるでしょう。
なお、2020年から新型コロナウィルス感染の影響を受け、多くの企業・団体において、半ば強制的に在宅勤務を実施したことで働き方が大きく変化し、出社率の低下でスペースに大幅な空きが出たことから、多くの経営者がファシリティに関心を持ち始めたことは、好ましい状況です。
インデックスグループとファシリティマネジメント
不動産・建物に関わる事業構想策定から建築プロジェクト支援、運用管理に至るまで一貫したプロジェクトマネジメントサービスを提供するインデックスグループは、事業活動を支える経営基盤のひとつであるファシリティマネジメントについても、その導入から、仕組みや体制づくり、データベース構築運用、日常的なファシリティの運用管理に至るまで、コンサルティングとアウトソーシング受託を行っています。これからしばらく、このファシリティマネジメントについて詳しくお話ししていきますので、お付き合いください。
WRITERレポート執筆者
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古阪 幸代
インデックスコンサルティング 顧問
富士銀行在職中に、ファシリティマネジメントに出会い、米国コーネル大学大学院で研究。シリコンバレーでのコンサルを経て、同銀行に復職し国内銀行初のFM部門を設立。コンサルタントに転身し、Genslerで東アジアの各社をコンサルした後、インターオフィス、明豊ファシリティワークス、三機工業等で代表・役員としてコンサル活動を継続。文科省・国交省・各種団体の委員・役員も歴任。自らもオフィスづくりに関わるネットワークWFMを1997年から主宰。会員600名超。一貫して、人を中心においた働きやすい環境を、経営戦略的に計画・構築・運営する戦略的FMを提唱・推進している。講演・執筆も多数。
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