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建設プロジェクトマネージャーとは何か(4)

面倒でもリスクを初期段階で洗い出す

インフラの建設をはじめプロジェクトと呼ばれるものはすべて同じですが、プロジェクトには、国・自治体や民間企業などの発注者、ゼネコンや下請けなどの受注者、出来上がった建物や施設を利用する受益者という三つの関係者が存在しています。

プロジェクトでは初期段階で、それぞれの責任とリスクを明確にすることがとても大事です。日本ではいつも曖昧にしがちです。だからこそ請負という発注形式ばかりが使われるようになったのかもしれません。もちろん、最初の段階ですべての責任やリスクを抽出できないこともあります。初めて取り組むプロジェクトでは、経験豊かなプロジェクトマネージャーにも想定できないリスクはいくつもあります。
 
愛知県のプロジェクトでは1700のリスク項目を抽出
 
私がプロジェクトマネージャーを務める愛知県の有料道路民営化プロジェクトは、30年間にも及びます。その間には当初、想定できなかったトラブルも起こるでしょう。こうしたリスクには、柔軟に対応していくことになりますが、それでも最初の段階で、可能な限り数多くのリスクを抽出して、責任範囲を明確にしておくことが大事です。

建設プロジェクトで言えば、設計や施工といった各フェーズで、リスク項目を並べていき、「物価上昇で資材価格が上昇したとき、〇〇%まではゼネコンの負担」「自然災害のような不可抗力で工事がストップしたときは発注者の負担」などと責任範囲を定めた表を作ります。相撲の星取表のようなものです。こうした作業は入札段階に行うのが鉄則です。リスクを金額換算し、入札価格に反映させるためです。

発注者はリスクと責任範囲を示しますが、一切交渉に応じないわけではありません。諸条件に関しては、受注者であるゼネコンとの折衝も行います。愛知県の有料道路プロジェクトでは、リスク項目が約1700にも及びましたが、応札者からの質問に回答しています。

こうして数多くのリスクを抽出して責任範囲を明確化した契約では、契約書の項目も膨大になります。そのため契約書は、単なる丸投げされた請負の契約書の2~3倍の分厚さです。

リスクを抽出し、責任範囲を一つひとつ決めていく作業は、手間も金も掛かるのは事実です。東日本大震災の復興プロジェクトで、アットリスク型のコンストラクションマネジメントを導入していますが、参加したゼネコン関係者の中には「これほど面倒な契約は、二度とやりたくない」という人もいます。もちろん発注者の負担も大きい。

しかし、公平性、透明性を担保して、適正価格で発注するためには、リスクと責任範囲を明らかにすることが不可欠です。

2020年の東京オリンピック・パラリンピック以降は、現在の建設バブルがはじけて、「丸投げして、請負でたたいたほうが安い」という時代が来るかもしれません。しかし、ゼネコンや下請けが厳しい金額で請け負うことになれば、目に見えないところで瑕疵ができるはずです。また杭データ偽装問題と同じことを繰り返すことになるでしょう。

プロが解説!プロジェクトマネージャーの仕事術(5)」に続く
 

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