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建設プロジェクトマネージャーとは何か(3)

成功確率100%のプロジェクトは来ない
 
そもそも論になりますが、発注者から私のような専門のプロジェクトマネージャーに仕事の依頼が来るプロジェクトでは、成功確率100%ということはあり得ません。

私が仕事を引き受ける際の判断基準は成功確率が50%を超えていることです。その意味では、プロジェクトのシナリオが書けていないと判断もつきません。いったん引き受けたら、プロジェクトの進捗に合わせて、60%、70%、80%と成功確率を上げていきます。プロジェクトに関わった当初は見えない部分も少なくありません。リスクをつぶしたり、見えなかった部分が見えたりすると、それをコストや別の要素(スケジュールや仕様など)に反映させていきます。

行政にしても、民間企業にしても、大きなプロジェクトの際には、プロジェクトの実行可否を決めるため、必ずフィージビリティスタディ(FS、実行可能性調査)を実施します。通常はこの段階から、発注者の内部あるいは外部から起用したプロジェクトマネジャーが加わります。造る建物に対するマーケット規模や、黒字化するために必要な施設の稼働率などを調査します。こうした調査をする大前提として、プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの目的や目標、事業収支などをきちんと理解しておく必要があります。

その上で、建物の大きさや機能など、仕様を決めるプログラミングを行います。

例えば、工場の建設であれば、機械やプラントが建物の中に入ります。こうしたケースでは、生産の責任者や生産ラインの設計者に話を聞いて、生産ラインが稼働する最低限のスペースや必要な設備などのスペックを一つひとつ確認して、建物の仕様へ落としていく作業が必要になります。

全体の目標コストについては、フィージビリディスタディなどから事業性を考慮して決定します。一方で、建物の構造、設備、外装などの大項目に分類して、それぞれの標準的なコストをはじき出した上で合算し、全体のコストを見積もります。

併せて重要なのが発注方式の決定です。従来型の請負に加えて、近年は前述したデザインビルドやアットリスク型のコンストラクションマネジメントなど、さまざまな発注方式が登場しています。建設市場の状況や、ゼネコンなどへのヒアリングを踏まえて、プロジェクトに最も適した発注方式を決定します。

プロジェクトが動き出すと、設計事務所やゼネコンの入札を実施し、決定した企業をマネジメントします。
 
重要なのは専門家の意見の取りまとめ即断即決
 
プロジェクトチームでは、基本的に責任者としてプロジェクトマネージャーが1人。一部のプロジェクトでは、そこにプロジェクトマネージャーの仕事をサポートするプロジェクトマネージャーのアシスタントが入ることもあります。

また、チームには、プロジェクトを進める上で必要な専門家が入ります。

私がプロジェクトマネージャーを担当している愛知県の有料道路民営化プロジェクトでは、サポート役として、シンクタンクが文書の作成や調査を担当しています。法律分野では法律事務所、収支計算や財務、会計については、監査法人などが参加しています。他に、海外で道路開発を行っている企業も技術アドバイザーとしてチームに参加しています。他に発注者である愛知県の建設部の職員も、数名加わっています。

それぞれ担当する分野は違いますが、プロジェクトを進める間、専門家は常に議論に参加して、自身の専門分野の観点から意見を出します。なので、「自分の分野のことしか私は知りません」では困るのです。プロジェクトチームでは、メンバーが一緒に、現場を訪れることもあります。

プロジェクトチームは、発注者が提供するスペースに常駐しているケースもあれば、プロジェクトマネージャーのオフィスなどに本拠地を置くケースがあります。現場や発注者のところを行き来しながら仕事をしていきますが、プロジェクトの仕様を固めるプログラミングの段階では発注者のオフィスに、朝から晩までチームのメンバーが常駐している状況になります。

プロジェクトマネージャーの重要な仕事の一つは、専門家や関係者に意見をどんどん言ってもらい、それをまとめて、適切な判断をしていくことです。
そのため判断力や構想力は欠かせません。専門家の知識は相当なものですが、プロジェクトマネージャーは、そこに横串を通して、プロジェクトの方向性を決めていきます。

プロジェクトマネージャーは発注者の考えを理解し、必要な権限を与えられています。その場で反応しなかったら失格です。関係者への指示は、基本的に判断した都度行います。もちろん、即決できないような重要な事案については、判断を先延ばしするケースもありますが、基本的にはその場その場で判断していかないとプロジェクトは進まない。そこは大事なポイントです。

プロが解説!プロジェクトマネージャーの仕事術(4)」に続く
 

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