REPORTレポート

代表植村の自伝的記憶

欧州出張で目の当たりにした政治・経済の混乱

TAG

【2024年10月15日掲載】
※このレポートは2024年10月15日にLinkedInに掲載したものを一部編集したものになります。

愛知県の政策顧問としての役割やビジネス関係の打ち合わせなどが諸々あったため、9月上旬に欧州各地を訪問しました。今回はその時に感じたことを書こうと思います。
 
フランスでは、第47回技能五輪国際大会(WorldSkills Lyon2024)が開催されているリヨンを訪れました。
 
技能五輪国際大会については、今回の第47回の誘致に愛知県は手を上げましたが今回の開催地であるリヨンに敗北。再チャレンジとして、2023年11月に2028年大会への立候補を表明しました。そして、今大会にあわせて開催されたWSI(ワールドスキルズ・インターナショナル)の総会において、2028年の開催地として愛知県が正式に選ばれました。日本での開催は21年ぶり4回目になります。
 
第49回大会は2028年11月15日から6日間、愛知県国際展示場(Aichi Sky Expo)とIGアリーナ(愛知県新体育館)を会場に「技能をつなぐ、持続可能な未来」をテーマに、65カ国、約6000人の参加者が62種類の競技を競う一大大会になる予定です。
 
余談になりますが、技能五輪全国大会は昭和38年から毎年開催されている大会。若い技術者の育成と、技能の重要性を広く一般国民にアピールするとともに、技能五輪国際大会の選手選考も兼ねるなど「ものづくり日本」を支える若手技能者の育成に貢献してきました。
 
今回のリヨン大会では、日本は産業機械の分野で3連覇を果たすなど、5個の金メダルを獲得しました(メダル獲得数では5位)。ちなみに、1位の中国は金メダル36個、2位の韓国が10個とかなりの差をつけられてしまいました。AIを駆使したものづくりは日本の新たな産業になり得ます。愛知県で開催される第49回大会では、日本の若い技術者の活躍を期待しています。
 
パリではジャック・アタリ氏に再会
 
さて、リヨンではWSIの総会にあわせて、リヨンのあるオーベルニュ・ローヌ・アルプ(AuRA)地域圏やエアバスなどが本拠を置くオクシタニー地域圏のキャロル・デルガ議長とも会談しました。AuRA地域圏の議長だったローラン・ボキエ氏は大統領を目指すため国会議員になっていましたが、わざわざパリから駆けつけてくれました。
 
また、ドイツでは中部国際空港に航空貨物の物流拠点を計画しているDHLグループCEOのTobias Meyer氏と、ケルンやデュッセルドルフでは世界最大級の見本市であるケルンメッセを訪問し、ノルトライン=ヴェストファーレン州(NRW州)のヘンドリック・ブスト州首相と会談しました。
 
以前の記事でも書きましたが、愛知県はNRW州と、水素ビジネスやスタートアップ、芸術文化を通した経済振興を進めています。その具体的な進捗状況をトップ同士が確認し、意見交換するための打ち合わせでした。
 
そうそう、パリでは欧州を代表する思想家、ジャック・アタリ氏にもお目にかかることができました。インデックスグループの関連三団体が主宰した2020年の国際シンポジウムに登壇いただいて以来、親しくさせていただいており、アタリさんの精力的な活動には尊敬の念に堪えません。
 
その後、知事とは別れ、スペイン・マドリードでビジネス会議を終え、日本に戻ってきました。
 
このように、とても密度の濃い欧州出張でしたが、どこの国もあまりいい雰囲気ではありませんでした。不穏な空気を感じたと言ってもいいかもしれません。
 
政治・経済が混乱している欧州
 
ドイツは政治・経済ともに混乱していました。ちょうどわれわれが訪問する前に結果が出ましたが、ドイツ東部チューリンゲン州で行われた州議会選挙では、移民排斥を掲げる極右野党「ドイツのための選択肢(AfD)」が第一党に躍進。お隣のザクセン州でも僅差の第二党になりました。
 
ナチスの十字架を背負うドイツにおいて、極右政党が州議会レベルで第一党になるのは第二次大戦後で初とのことです。NRW州のブスト州首相と面談した州議会議事堂の前でも、移民政策に抗議するデモが起きていました。
 
経済でもドイツが誇る自動車メーカー、フォルクスワーゲン(VW)が国内工場を閉鎖するというニュースが国内外に衝撃を与えています。
 
VWはEV(電気自動車)に大きく舵を切りましたが、欧州のEV市場は成長が鈍化。中国市場の低迷もあって経営不振に陥りました。トヨタの豊田章男会長が確信を持っていたかどうかはわかりませんが、ハイブリッド車の伸びもあり、EU(欧州連合)市場での自動車販売で売上高トップに躍り出たトヨタとは対照的です。
 
現地でも感じましたが、ドイツの経済は見るからに悪く、国内市場に立脚している企業ほど厳しい状況に置かれています。
 
こうした経済の低迷や移民の流入を巡る社会の軋轢が、極右政党の台頭につながっているのは間違いありません。
 
これは、フランスやスペインなどにも当てはまります。
 
フランスでは、マリーヌ・ルペン氏が率いる極右政党「国民連合(RN)」が今年6月の欧州議会選挙と、その後のフランス議会の解散・総選挙で大躍進を果たしました。スペインも観光業は活況を呈していますが、その恩恵を受けていないと感じている市民は多く、中南米の富裕層の移住増加やオーバーツーリズムの負担とあわせて不満は高まっています。中国経済のゆくえも気になりますが、欧州の状況もかなり不安です。
 
日本は今、自民党総裁選も終わり、衆議院議員総選挙のまっただ中ですが、そこでの議論の中心は内向きなものばかり。そんな日本は平和な国だなと思います。その中でも、ワクワクする気持ちをいつも持ち続けたいと改めて思います。
 

第47回技能五輪国際大会(WorldSkills Lyon2024)の様子(Photo: courtesy of WorldSkills International) 

その他のレポート|カテゴリから探す

お問い合わせ

CONTACT

ご相談・ご質問等ございましたら、
お気軽にお問い合わせください。

03-6435-9933

受付時間|9:00 - 18:00

お問い合わせ
CONTACT