REPORTレポート

代表植村の自伝的記憶

仮設会場とPPPをフル活用するフランスオリンピックの意義

【2024年5月31日掲載】
※このレポートは2024年5月22日にLinkedInに掲載したものを一部編集したものになります。
 


先日「隈研吾さんとの仕事で感じるグローバルに挑戦する姿勢と熱量」の投稿で、パリ出張と隈研吾さんの話をしました。
 
実は、今回の出張ではインデックスグループの本業の一つであるインフラPPP(Public Private Partnership:官民連携)に関する打ち合わせもいろいろとありました。今回はそのあたりのことをお話しようと思います。
 
今回のパリ出張では、パリオリンピックの会場をいくつか視察しました。PPPやコンセッションで整備されたアリーナがあったからです。
 
例えば、バスケットボールなどの試合が行われる収容人員8000人のアディダス・アリーナはコンセッション方式によって整備されています。
 
建物はパリ市が公共工事として建て、14年間の運営権を民間企業に売却する形です。施設整備の際には、できるだけ民間のコンセッション事業者の意見が取り入れられるような工夫をしています。
 
また、パリオリンピックのメイン競技会場の一つ、収容人員約2万人のアコー・アリーナも、大規模改修の際にはBT+コンセッション方式が取り入れられました。大規模改修とは、4面ディスプレイなど設備の拡充やVIPスペースの拡張、ディスコクラブのような新たなエンターテインメントスペースの整備などです。
 
こうした大規模改修の結果、アコー・アリーナの有料入場者数はイギリス・ロンドンのO2アリーナを抜き世界2位となりました。コンセッション事業者になったパリ・エンターテインメント・カンパニーの運営ノウハウもありアリーナの稼働率は上昇。アリーナの売り上げも35%強に伸びています。
 
なお、BT+コンセッションとは、民間が施設を建て(Build)、所有権を公共に移転し(Transfer)、運営(Operation & Management)をコンセッションで民間に委ねる仕組みで、愛知県のIGアリーナ(愛知県新体育館)も同じBT +コンセッションで整備されています。
 
パリオリンピックでフル活用される仮設会場
 
もっとも、オリンピック会場を視察して感じたのは、新しく建てた施設は必要不可欠な施設だけで、大半は既存の施設か仮設だということです。
 
ビーチバレーボールの試合が開催されるエッフェル塔スタジアム、近代五種や馬術の会場となるベルサイユ宮殿、陸上競技が行われるパリ市庁舎、ブレイキン(ブレイクダンス)やBMX(バイシクルモトクロス)、スケートボード、3×3バスケットボールなどが行われるコンコルド広場は巨大な仮設会場で、五輪後には解体され、別の形で再利用されます。
 
現在、日本では大阪万博のパビリオン建設が急ピッチで進んでいますが、数カ月後に取り壊すようなものであれば仮設で十分です。必要かつ、将来にわたって活用可能なものであれば新規で整備しても構いませんが、パリのように完成している都市の場合、仮設のほうが時代に即していると改めて感じました。
 
もう一つ、パリ出張の目的はフランスのグローバルインフラファンドや大手のインフラオペレーション会社の幹部と会うことでした。
 
インフラPPPにおける効率化とデジタル化、カーボンニュートラルは最重要課題です。これからのインフラ投資には、ソーシャルインパクトファンドが必要不可欠と日頃から考えていたので、彼らとはとても有意義な意見交換ができました。
 
成長のほとんどをアフリカで見ている欧州ファンド
 
私が考えているインデックスグループの新たなビジネスモデルは、グループ会社のインデックスストラテジーや社会システムデザインを通してインフラPPPプロジェクトを組成し、建設におけるプロジェクトマネジメントと完成後のO&Mをそれぞれの事業会社が担うというもの。まだまだ足りないピースはありますが、プロジェクト組成の部分でファンドの機能は欠かせないため、さまざまな角度から検討を進めています。
 
インフラファンドの話は別の機会に譲るとして、フランスのファンドと話していて感じたのは、アフリカを見る彼らの視線です。
 
既に広く知られているように、2050年にアフリカ大陸は世界の人口の半分を占めると言われています。中国もアフリカ市場に力を入れていますが、歴史的な経緯もあり、ヨーロッパの国々、とりわけフランスはアフリカ大陸で強い影響力を誇っています。
 
ファンドの幹部と話をしていると、ビジネス成長のほとんどの部分をアフリカで見ているということがよくわかります。
 
物理的に離れていることもあり、日本企業はアフリカ市場への進出が遅れています。とりわけインフラPPPの分野では、フランス、スペイン、ポルトガル、中国、韓国などの企業に大きく見劣りしているのが現状です。
 
インデックスグループもガーナやモロッコでプロジェクトが動いているぐらいですが、アフリカの時代が訪れる前に、本腰を入れてアフリカ市場を開拓しなければならないと強く感じました。なるべく早く戦略を練り、具体的なアクションを起こすつもりです。
 
 

その他のレポート|カテゴリから探す

CONTACT