REPORT

代表植村の自伝的記憶

今こそ地方に必要な建設・インフラ関連のプロジェクトマネジャーをどう育成するか?

建設プロジェクト運営方式協議会(CPDS協議会)という一般社団法人があります。インデックスが発起人となって設立した組織で、私が副会長を務めています(初代会長は日本IBM元最高顧問の椎名武雄氏、現会長は日本総合研究所の社長・会長を務めた花村邦昭氏)。法人の設立は2015年5月ですので、今年で設立11年目を迎えます(2017年に一般社団法人化)。
 
何を目的とした組織かというと、建設・インフラ事業を発注する人々、具体的には異業種の企業や法人、自治体の担当者が多様な契約発注方式を学び、使いこなすための支援や人材育成です。
 
かつては設計事務所に設計を依頼し、建設会社には請負契約で発注することが一般的でした。ただ、この十数年で建築会社に設計を任せるデザインビルド(設計・施工の一元化)や、設計の段階で施工者を入れ、コスト削減を図るECI(Early Contractor Involvement)が定着しました。
 
さらに、下請けのコストを開示(オープンブック)し、一定のフィーを乗せるアットリスクCM(コンストラクションマネジメント)やピュアCMといった手法も試されるようになり、建設プロジェクトの契約発注方式は多様化しました。
 
建設・インフラプロジェクトの品質やコストを最適化するためには、こうした契約発注方式を使いこなす必要がありますが、実際にはかなりの専門性が求められるため、われわれのようなPM(プロジェクトマネジメント)やCMの専門家を発注者の代理人として雇う局面も増えました。
 
そうした流れの中で、日本における建設プロジェクトマネジメントの学術的な裏付けと建設プロジェクトマネジャーという職域の創出を目的に、CPDS協議会を設立したのです。
 
今考えているCPDS協議会の進化の形
今ではデザインビルドやECIは一つの選択肢として普及しましたし、アットリスクCMもごく一部ですが、公共工事で採用されるようになりました。PMやCMを手がけるコンサルティング会社も増え、建設会社の見積もりを検証するコストマネジメントや発注者の代理人として現場を管理する発注者側CMの事例もだいぶ増えています。
 
設計事務所任せ、ゼネコン任せという発注者もまだまだ多いと思いますが、CPDS協議会の立ち上げた当初の目的である建設プロジェクトマネジャーの職域の創出は達せられつつあるように感じています。
 
同様に、CPDS協議会の成果をもとに2022年に出版した『現代の建設プロジェクト・マネジメント 複雑化する課題を読み解く』が第19回日本ファシリティマネジメント大賞を受賞したように、建設プロジェクトマネジメントの学術的な裏付けも認められつつあります。
 
一方、既に問題になっていますが、建設コストの高騰によって全国各地の建設・インフラプロジェクトが中止や延期に追い込まれています。とりわけ問題になっているのが病院や学校など公共施設の更新です。
 
全国の公共施設では老朽化が進んでおり、建て替えなどの更新が必要な病院や学校が少なくありません。実際、病院の更新プロジェクトはいくつも立ち上がっていますが、建設コストのあまりの高騰のため、プロジェクトが頓挫しています。
 
そうした状況を受け、CPDS協議会もその目的を発展的に進化させようと動き始めています。どのような進化かというと、今の物価高や人材不足に起因する建設コストの高騰に対応しつつ、建設・インフラプロジェクトを推し進めることのできる人材の育成と制度設計です。
 
具体的には、発注者CM(コストマネジメントや現場の安全管理業務)の地方移転、ゼネコンによるオープンブック(原価開示)の採用、CMやPPP(Public Private Partnership:官民連携)、コンセッションの啓蒙・普及、施設のオペレーション&マネジメントの民営化です。
 
地方自治体の技術者不足を補う発注者CMによる地方創生
財政と技術者不足に苦しむ地方自治体では、建設費の高騰や物価変動の価格の適正化を図るためにコンストラクションマネジャーをアドバイザーとして雇うケースが増えています。ただ、こうしたコンサルティング会社の多くは首都圏や大阪に集中しており、彼らが増加する地方自治体のCM業務を受注しているのが現状です。
 
一方、地方では公共工事のみならず建設工事も減少しており、地元の設計事務所やコンサルティング会社の業務が減っていると言われています。その点、発注者CMのコストマネジメントや現場管理の業務はマニュアルとデータがあれば地元の設計士やコンサルタントで十分にこなせますので、CM業務の地元化は、本来の公共工事の役割である地元還元にも寄与します。
 
CPDS協議会では、具体的に発注者CMの地元化を目指し、人材育成と組織化、そして地域の発注者を支援する体制を構築したいと考えています。
 
あわせて、公共工事の入札方式にオープンブック方式を取り入れるように政府にも提言していくつもりです。
 
オープンブック方式とは、施工者である建設会社が専門工事業者に対する発注金額や資材費などすべてのコストを発注者に開示し、そこにCM会社の適正な費用と利益を乗せて支払うという仕組みで、欧米では一般的な発注方式です。
 
現在は物価変動の影響で見積もり段階よりもコストは増大する傾向にあります。それがゆえに、公共入札への参加を手控える建設会社も少なくありません。でも、コストとフィーを明示するオープンブック方式であれば、物価上昇に伴う価格の妥当性や追加工事も見える化されるため、発注者の納得感も高まるでしょう。
 
受注者のゼネコンは大儲けできませんが、適正な利益を確保できるため、ウィン・ウィンだとも言えます。
 
日本では古くからゼネコンによる請負契約(ゼネコンが決められた工事費で一貫して竣工まで約束する契約形式)が主流でしたが、まずは公共工事からコストとフィーを明示したオープンブック方式のCMを地方自治体とゼネコンの双方に啓蒙・普及する活動をCPDS協議会として進めていきたいと考えています。
 
コスト削減で大きな役割を果たす運営の民営化
CPDS協議会を通してもう一つ伝えたいのは、建設のイニシャルコストだけでなく、ランニングコスト、すなわちオペレーション段階までを含めたライフサイクル全体でコスト削減と運営期間の収入増を考えるということです。
 
私たちはさまざまな建設・インフラプロジェクトのPMを担当していますが、建設会社が提示する見積もりコストの見直しで削減できる金額は10%までが限界です。もちろん10%の削減はとても大きいことですが、今の高騰する建設費を抑えるには限界があります。
 
一方、文化、スポーツ、観光、医療などの公共施設のPPPに関わる中、施設が完成した後の運営(オペレーション&マネジメント)段階で、調達や事務管理業務の効率化やDX化に改善の余地が多くあることがわかっています。コスト削減だけでなく、工夫次第で収入を増やすことも可能です。これは、今の公共インフラの運営に経営的視点を組み込むということです。
 
CPDA協議会は新たな時代にあった建設発注と運営の方式を上で述べた観点で啓蒙・普及していきたいと思いますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
 
【2026年1月26日掲載】
※このレポートは2026年1月26日にLinkedInに掲載したものになります。

 
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