REPORT レポート
代表植村の自伝的記憶
暴動が起きたニューカレドニアで始めようとしていたこと
【2024年6月14日掲載】
※このレポートは2024年6月11日にLinkedInに掲載したものを一部編集したものになります。
みなさまもご承知のように、南太平洋のニューカレドニアで大規模な暴動が起きています。デモ隊と警官隊の衝突によって死傷者が多数出たため、2024年5月15日には非常事態宣言が発令されました。日本ではあまり報道されていませんが、現地では店舗や公共施設、道路などのインフラが激しく破壊されているようです。
ニューカレドニアはフランスの海外領土。治安悪化を受け、マクロン大統領は1000人以上の警察官を送り、デモ隊の鎮圧を進めています。
暴動が起きた原因は、長年続くフランスの植民地主義に対する反発があると言われています。ニューカレドニアには議会や政府もありますが、最終的な決定権を持っているのはフランス政府。そのため、先住民族の間で不満が高まっていました。
その不満が今、このタイミングで爆発したのは、フランス政府が進めた参政権の拡大にあると言われています。
ニューカレドニアで進めようとしていたパイロットプロジェクト
この5月、フランス議会は10年以上、ニューカレドニアに居住した人に参政権を認める法律を可決しました。ただ、欧州系を中心とした移住者が参政権を持つようになれば、人口に占める先住民族の割合が低下します。そうなれば、フランスからの独立も遠のいてしまう。それで、独立派が激しく抵抗しているわけです。
これまでの投稿でも触れてきましたが、インデックスグループはインド太平洋島嶼国でPPP(官民連携)プロジェクト、特に水関係のPPPプロジェクト(Water PPP)を中心に水環境の改善を進めようとしています。
その中には、もちろんニューカレドニアも含まれており、当社における位置づけは決して小さくありません。
インデックスは日本の資源エネルギー庁の委託を受け、2021年12月から3カ月間、日本企業などがスマートシティ関連技術を海外に展開するための実現可能性調査(FS)をニューカレドニアで実施しました。
ニューカレドニアでは割高な電気料金が経済成長の足かせになっています。そこで、世界一高いと称される電気料金を諸外国並みに下げるため、再生可能エネルギーと蓄電池、さらに水素を活用した電力生成・マネジメントの最適化に関して、インデックスグループの社会システムデザインが持つエネルギーマネジメントシステム「CSSD」を組み合わせ、提案しようと考えたのです。
蓄電池の活用によって生み出した電力を無駄なく使うことに加えて、その電力で水素を作り、公共交通などのエネルギーとして活用。余剰分を輸出に回してニッケルなどに変わる新たな輸出産業に育てるという提案です。
水素の量を確保するためには他の島嶼国との連携が必要になりますが、インド太平洋のすべての島嶼国が同様な課題を抱えていますので、こうしたパイロットプロジェクトを実装していくことで、他の島嶼国への横展開も可能になります。
現に、この7月に開催される第10回太平洋・島サミット(PALM10)では、サイドイベントとして、インド太平洋の島嶼国と日本政府やフランス政府などの諸外国、さらにOPPS(PPP推進支援機構)など民間企業などが参画した、水環境の課題解決に向けた会議の開催を計画しています。
ニューカレドニア政府はPALM10に参加する意向を表明していますが、暴動の沈静化が遅れれば参加が難しくなるかもしれません。
離島から始めるエネルギーの地産地消
南太平洋の島嶼国は地政学的な重要性が増しており、中国やアメリカ、フランスなどが関係強化に向けた動きを進めています。
私がパリから帰国した5月1日に岸田総理がパリを訪問し、その数日後の6日に習近平国家主席がパリを訪問しました。そして、マクロン大統領は5月23日にニューカレドニアを訪問し憲法改正の延期を決めました。今回の暴動も、表向きはフランスに対する独立派の不満ですが、背後でどういう動きがあるのかはわかりません。
CSSDの生みの親であり「船舶に非線形造波に関する研究」で第101回の恩賜賞・日本学士院賞を授賞した東京大学の宮田秀明名誉教授(社会システムデザインの代表取締役社長)によれば、エネルギーの地産地消を進めるうえで離島は最適な存在です。エネルギーの生成とマネジメントにおける最適なモデルが構築できれば、電力供給に課題を抱える世界中の離島に展開できるでしょう。
ニューカレドニアで暴動が起きてしまったのは実に残念なことですが、対話による沈静化が実現し、一刻も早く平穏な日常に戻ることを心より願っています。私たちとしては、インド太平洋諸国の海洋環境問題の水環境をPPPで改善すべく、プロジェクトの準備を粛々と進めていく以外にありません。
現地の情勢が落ち着いた後、復旧復興支援を含め、ニューカレドニアのインフラPPPプロジェクトに着手できるよう万全を期していきます。
その他のレポート|カテゴリから探す